ごぼう天うどんを注文する。
すると、かけうどんにごぼう天が盛り付けられて、テーブルに運ばれる。
何を当たり前のことを言っているんだ、
きっと多くの人がそう思うはず。
わざわざ言っておきたいのだ、この「錦うどん」のことを話すなら。
初めてこの店を訪れた時、ここは「愛情」でできているんだと思った。
「錦うどん本店」のことを悪く言う人に、これまで出会ったことがない。
この愛され方は北九州一ではないだろうか。
店主の伊熊さんがこの店を始めたのはかれこれ半世紀も前のこと。
「表の通りから奥に入ったこんな分かりにくい場所でしょ。
だからわざわざ来てくれた方にちょっとおまけをするようになったの」
そのおまけがとっても素敵なのだ。
伊熊さんが口にした“おまけ”とは、
うどんを注文した人に対する心ばかりのサービス。
トッピングを増やしてくれるのだ。
「それが、、、あまりにもたくさんサービスしちゃうんです。
でも、もう止められなくって」
娘さんが笑いながら、そう教えてくれた。
だから、ごぼう天うどんを注文しても、
いわゆるごぼう天うどんは出てこない。
出てこないというか、自動的にグレードアップする。
分かりやすい例だと、肉うどん。
肉うどんをオーダーすると、
あら不思議、肉ごぼうになってしまう。
ゴボウ天、時にはエビ天と太っ腹にどんどんのせるため、
カウンターに積み上がった天ぷらは、
みるみる減っていく。
そんな様子を横目に心配する娘さんだったが、
前述の通り、今ではすっかり、笑顔で諦めモードだ。
ただ、そんなサービスがなくても、
持ち前のサービス精神は発揮されている。
写真のうどんは「かやくうどん」なのだが、
ご覧の通りの贅沢仕様。具だくさん。
そして一杯500円。愛情以外に他ならない金額だと思う。
出汁には良質な昆布を惜しみなく使い、
小さな子供も喜んでごくごくと飲んでいくそうだ。
娘さんが担当している打ちたて、切りたて、茹でたての麺も秀逸。
昔ながらの機械で製麺する様子を見ていると、
心がほかほか温まる。
トッピングはあくまで目に見えるサービスであり、
見えないところにも手間暇を惜しまない。
最後に訪れて、しばらく時間が経った。
北九州の母に、今すぐ会いたい。
おごちそうさまでした !!!