和歌山ラーメンには三つの大きなカテゴリーがあるということを、
先日、井出商店さんの投稿にて書かせてもらった。
「醤油ベースの豚骨醤油味」、「豚骨ベースの豚骨醤油味」、
そのいずれにも属さない、第三のラーメンを食べてみたいと思って調べてみたら、
この「山為食堂」に行き着いた。
なんでもルーツは和歌山をはじめ、
近畿地方や中国地方にかけて約100店舗も展開しているという老舗の大衆食堂「力餅食堂」。
初代がこの力餅食堂で修業をしていたとのことで、
屋台系でも、井出商店系でもないという立ち位置。
食堂ということで、昔はうどんやそばを出していたそうで、
途中から中華そばが加わった。
今でもその名残で、うどんも味わうことができる。
創業は昭和28年。ここもかなりの老舗だ。
店内はまさに昭和を感じる大衆食堂の風情で、
土間、そして使い込まれたテーブル、
座面に味わいが出て臙脂(えんじ)色となった椅子、
ただ食事をするだけのことが、
そんなごくありふれた日常の一コマが、
ドラマになってしまいそうな、そんなノスタルジックな空間だ。
うどんはメニューにあるが、ぼくが食事をした時間には注文する人がおらず、
全員が中華そばをオーダーしていた。
あと、ご飯の注文比率がとても高かったのが印象的だ。
中華そばはスープがすこぶる濃密。
コクのある豚骨の出汁、そこに和風の味わいが加わり、
単純なる濃厚とは一線を画す。
醤油の風味も、スープの色目が物語るように、当然ながらギンギンに効いていて、
ただ、醤油っ辛くはない。
ほかの和歌山ラーメンのお店もそうだったが、
醤油が一人歩きしているところは全くなかった。
やはり和歌山は醤油との付き合い方が上手なんだろう。
スープの質感としてはほのかにザラつきがあって、
それが麺にしっかり絡む。
その麺は中太のストレートで、これまでに食べてきた和歌山ラーメンの中では一番太め。
これが実にたまらないインパクトをもたらす。
もともと細麺だったのものを、その後の改良によって太麺にしたようで、
確かに差別化という意味でも成功しているし、
なによりスープにジャストマッチしているのが最高。
ちなみに、スープに麺を入れ、再度加熱して麺そのものに味を浸透させるという手間をかけているそうだ。
目に見えないところにまで、一切の妥協がない。
チャーシューはトロトロ、味付けしっかり。
なるほど、これはご飯が恋しくなる。
ちなみにこれまで食べた和歌山ラーメンは、
どの店にもレンゲなかった。
すっかりレンゲを使うことに慣れてしまっていたため、
はじめは抵抗があったのだが、
丼を持ち上げてスープを吸うという本来の楽しみ方が、
この和歌山のラーメンには似合っているように思えた。
豚骨の、ほのかにとろみのあるスープは、
香りがとっても豊か。
そして色目はかなり力強いのに、とても飲み口さっばり。
丼に顔を近づけるのが良い。
丼との口づけであり、老舗との恋愛。
恋に落ち、そしてまた訪れたくなる。
おごちそうさまでした !!!