和歌山でも老舗にあたるこの「井出商店」の創業は1953年。
言わずと知れた和歌山のラーメンを全国区にした有名店だ。
これまで和歌山に行く機会がほぼなかったため、
なかなか来店する機会に恵まれていなかったが、
ひょんなことから訪問が叶う。
「和歌山ラーメン」という言葉はもともとなく、
地元では「中華そば」もしくは略した「中華」で親しまれている。
福岡においてラーメンといえばイコール白濁した豚骨ラーメンを意味するのと同じように、
この和歌山でもラーメンといえばイコール、中華そばを意味する。
和歌山のホテルで手に入れたラーメンマップによると、
和歌山のラーメンは、スープの特徴によって、
3パターンに分類することができるのだという。
まず、醤油ベースの豚骨醤油味。
これは和歌山市内の中心部を走っていた路面電車の停車場に軒を並べていた屋台発祥の味である。
主な製法はまず豚骨を醤油で炊き込み、
味が馴染み、骨に染みこんだらその骨を取り出し、
これを炊き込んでスープを作るのだという。
次に、豚骨ベースの豚骨醤油味。
こちらは、豚骨スープの存在感がしっかりとあり、醤油が絶妙に絡んでいるスープを指す。
その製法は豚骨をじっくりと炊き出し、乳化させたスープに醤油を加えて調味するというものだ。
そして最後が、上記の2つ以外のラーメン。
「井出商店」は上記でいうと豚骨ベースの豚骨醤油味の代表格。
同店が全国区になったため、
「和歌山ラーメン」というイメージはこの井出商店によって形成された節もあるのだが、
実際には醤油ベースのお店のほうが多いのだという。
福岡の豚骨ラーメンでいうと、南京千両と三九の関係のようなものか。
中華そばのスープは、色目が濃い茶色で、なかなか力強そうな面持ち。
ただ、口に含んでみると、ん?と眉が上がる。
豚骨の出汁感、まろやかな醤油の風味はしっかりと伝わってくるのだが、
脂っ気は抑えてあり、グイグイといけるじゃないか。
濃厚がすいすいと吸い込める。気持ちいい濃厚体験。
細ストレートの麺は柔めに仕上げてあった。
しなやかな食感で、スープの色を吸い込んで褐色気味。
麺に味わいが乗っていて、麺が美味しい。
チャーシューの味付けも醤油感あり。
これも脂っ気なく、どこまでも穏やか。
和歌山のラーメンではお馴染みという「早ずし」のさっぱりした味にも合う。
そんな麺とスープだった。
店の空気はどっしりと老舗感。味わいある雰囲気が良い。
そして土間、筆書きのメニューがかっこいい。
おばちゃんたちはやさしく、和歌山の人情に触れた気がした。
おごちそうさまでした !!。