蕎麦前を楽しみ、気の利いた酒の肴に舌鼓を打ち、〆に蕎麦をたぐる。
蕎麦をそうやって今日でいう「居酒屋」のように愉しむ姿が、
本来の蕎麦屋だったと本で知り、
江戸時代の人々を羨ましいと思った記憶が蘇った。
年を経るほどに蕎麦という文化に憧れ、惹かれ、
少しずつ、勉強していくうちに、
やっぱり蕎麦は楽しいなと実感できるようになった30代。
自分よりもひと回りも、ふた回りも上の世代の店主が営むお店へ行き、
いろいろと教えてもらい、それが有意義だったのだが、
一方で、最近、近い年の店主が営む蕎麦の店がもう少し増えれば、
もっと気軽に聞きたいことも聞けるかな、とも思っていた。
10月21日に開業したばかりの「酒と蕎麦 まき野」。
店主・牧野さんは元々和食の店で勤め、
その後、いくつかの飲食店で腕を磨き、この店のオープンに至る。
僕はエムズグリエ/musumatsuで勤務していた頃に牧野さんに出会った。
年が近く、その当時も取材などで気さくに対応してくれ、
そんな牧野さんが店を始めると聞いて、しかもそれが蕎麦と酒の店だと知り、
これは願ってもないお店になりそうだと直感した。
当然、その時は、牧野さんがどういう蕎麦を打つのかを知らないのだが、
きっと美味しいだろうと思わせる人間味があって。
お店でちょっと話を聞くと、
和食時代から出汁を得意としていて、
いつか、それを生かした店を始めたかったのだそう。
その後、縁があって牧野さんは福岡における蕎麦の名店で
店主に蕎麦打ちの基本を習い、
その後、独学で自身の蕎麦を追求していった。
蕎麦はざるが750円〜、かけが650円〜。
二八で仕上げた蕎麦は食感が滑らかで、軽やかな風味が印象に残る。
返しは甘みがキリッと引き締まっていて、
出汁の風味がふわりと広がって、
なんだかとてもセンスの良さを感じた。
蕎麦前から楽しみたいお店だが、
もちろん、蕎麦だけを味わうこともできる。
酒の肴は板わさやだし巻き玉子、天ぷら、
鴨料理といった蕎麦屋の王道的な料理から、
その日の食材で作る季節の一品も。
牡蠣の揚げ出し、最高だったなあ。
日本酒は厨房の中央に鎮座するショーケースに並ぶ。
全国各地からチョイスされていて、瓶を見るだけで楽しい。
だから、カウンター席がいい。
ショーケースを眺めながら、
次はどのお酒にしようかと悩むのは至福の時間だ。
またゆっくり訪れたいなあ。
おごちそうさまでした !!。