町中華という言葉があるならば、町蕎麦という表現もありだと思う。
東京と違って、元々蕎麦文化が根付いているわけではない福岡において、
蕎麦というと、ちょっとだけ敷居が高そうな(本来の文脈はその対局なのだけれども)存在。
実際、先日、福岡在住の某漫画家さんに蕎麦についての思い出をインタビューしたが、
やはり、そんな先生においても年越し蕎麦に食べるのが真っ先に思い浮かび、
日々食べるというと、うどんかラーメンかだったとおっしゃっていた。
もちろん蕎麦を食べないわけではなく、頻度が少ないという意味。
先生は東京で暮らしていた際に蕎麦屋で飲むという愉しさを知り、
すっかり蕎麦を食べるようになったのだという。
ぼくも人生において蕎麦を食べる頻度は少なかったが、
仕事柄食べるようになり、そしてその魅力に開眼し、
東京でもいくつかの名店を巡り、そうやって次第に、
日常の選択肢に蕎麦が入るようになった。
蕎麦を食べるようになって分かった。
気兼ねなく、さくっと啜りに行ける、町の蕎麦屋が身近にあるとしたら、
それはとても幸福なことだということを。
日常的に蕎麦が親しめる「そば処 さらしな」さんは、
福岡においてぼくがイメージする「町蕎麦」を体現しているように思えた。
気取った風はなく、老若男女、そして蕎麦通も、そうでない人にも気持ちよく開かれている町の名店だ。
ついついその気持ちよさに背中を押されて鴨せいろを注文した。
そばは口当たりがよく、風味は清涼。喉越しの良さはもちろんで、リズムよく啜れる。
そして鴨はしっとり、そしてたっぷり。気前の良さに驚いた。
そんな鴨旨味溶け込む辛汁のキリリとした風味も良い。
場所は赤坂。地下鉄赤坂駅を上がってすぐ。
この街にも似合う店だと再認識した。
ちなみに、金曜のみ[SOBAR]として20:00〜23:00(LO22:30)も営業している。
日本酒と気の利いた酒肴、そして蕎麦。いつか訪問したい。
おごちそうさまでした !!。