訪れること三度。
1回目、そして2回目と行列に怯んで退散。
まさに三度目の正直での来店となった。
何と言ってもすでに評判がいい。
「東京の名店で修業した店主が営む」ということで、
さらにいえば、その名店はミシュランガイドのビブグルマンに掲載されるなど、
華々しい実績があるため、
「その味を福岡でも楽しめるようになった!」という意見や感想が多く、
なるほどそれは期待が高まると思った。
そう、確かにそのように思ったのだが、少し頭の中が混乱する。
何かが、とても引っかかっていた。
店に入り、はつらつとした表情で挨拶された店主は、
ぼくが思っているよりもずっと若かった。
地元が福岡なのか、それとも全然知らない土地で店を構えたのか。
どちらにしてもよくぞ福岡に、という気持ち。
食券機で看板メニューの地鶏醤油らーめんを購入する。
そしてカウンターで席に座って麺を待つ。
運ばれてくるまでの間、らーめんについての説明書きに目を通した。
とても丁寧に使用している原料について書かれてあった。
目を引いたのは、修業先の店で使っているのだという、
棣鄂さんのところのオリジナル麺を仕入れ、使っているという部分。
一層、期待に胸が膨む。
丼の中身を俯瞰し、ちょっとぼーっとしてしまった。
澄んだスープの中で優雅にたゆたうように、
その姿を品良く沈ませる麺。
周囲には穂先メンマ、紅白になった2種のチャーシュー。
そして中央には三つ葉。彩りがよく、食欲を静かにかきたてる。
スープは鶏や乾物の旨味が冴え渡り、
その中で店で火を入れるという生醤油が躍動。
醤油が美味しいなと思わせる正統派の醤油らーめんだった。
そのスープを吸って茶色がかった麺がいい。
麺が10mくらいあって、ずーっと啜り続けていたい!
そんな願望がひょっこりと顔を出す始末。
うっかり咀嚼をせずに吸い込みたくなるくらい汁気をまとっていて、
正直に言うと半替え玉をしているという案内を見たとき、
「いやいや醤油ラーメンに替え玉は、、、」と思ったが、完全撤回。
確かに替え玉するとスープに味が染みないだろうが、
それでも構わないと思わせる麺の力がある。
究極いうと、麺だけ味わうために、さらに半替え玉したい。
チャーシューは前評判で既知の通り、しっとり感が絶妙だった。
特に鶏肉のほうはその食感そのものが驚愕。
チャーシューのハイクオリティぶりを知っていたから、
チャーシューを盛ったご飯ものを合わせて注文したが、
その専門店でも十分流行るとさえ感じさせた。
引っかかっていた理由が、食べ終えてわかった。
多分、東京の〜という文脈が先行し、
一人歩きして語られているのが嫌だったんだ。
修業したことは事実で、それを誇りに店を構えているのだと思うが、
はや川は、今もこの先も店主の店で、修業先の話ではなく、
この店がどうなんだ、という文脈で語られてほしいんだ、ぼくは。
細かく書かれた素材の説明などは、
今を伝えたいという思いの現れ(だと勝手に思った)。
情報ではなく、味。この味が語られていってほしいな、なんてことを思った次第。
雑誌などではそういう説明をする必要があるかもだけど、
その辺の事情が関係ないところでは東京の〜という説明は封印しようと思う。
情報は客観データだから使いやすいのだけれど、
実際どうなのよという熱のこもった伝播が楽しみだ。
おごちそうさまでした !!。