今、何がしたいかと聞かれたら、
可能な限り巴蜀に通いたいと答える。
それくらい荻野さんの味に夢中だ。
この店について語れるほど全然通えていないので、
とても浅いことしか言えない。
それでもわずかな訪問の際の記憶は鮮明で、
どの思い出もまたきらきら輝いている。
インパクトがしっかりと今もぼくの中に残っている。
ある時、ここのテーマが、街場の伝統料理であり、
庶民の中国料理だということを知り、とても感心した。
大衆が軸にあるので、例えば、「この味でこの価格はすごい!」という
感動体験が普通に起こってしまう。
前回、日本で唯一だろうという「豌杂面(ワンザーミェン)」を食べた。
本当にちらっと食後に少しお話を聞かせてもらった時、
これは成都で流行っているという麺料理で、
めずらしい白い麺は乾麺だった、
乾麺で食べる、一見、汁なし担々麺のようなその麺料理は、
ゾゾッと鳥肌が立つ味わいで、
もちろん大衆的な料理ということもあって1000円くらいだったと思う。
シンジラレナイ!!と心で何度も叫んだ。
ぼくは美味いものを食べる時、
心の中で何度も「美味いなあ」とぶつぶつつぶやいているんだが
(あくまで心の中なので危ない人ではないですよ)、
何度繰り返したことか。
ぼくの言葉にCUEがついたかのようだなと思え、
一人でにやけてしまった。
そんな定番メニューではない麺料理ではなくとも、
その感激は体験できる。
写真は汁なしの担々麺。
東月隈にあった頃に食べてうおおおお!!!!ってなったが、
やっぱりうおおおおおお!!!!!!!!ってなった。
辛さ、痺れ、旨味、清涼感、五感が刺激され、
次第に、ハイになっていく。
食べる速度は上がり、もう周りが見えなくなって、
ぼくと麺の世界になる。
もはやどこにいるのかは関係なく、
周囲の音、雑音は消し飛び、
麺をすする音だけが大きく脳内に響く。
満腹中枢は麻痺し、
空を飛べるんじゃないかっていうように、
いくらでも食べられるんじゃないかと錯覚し、
そのうちにだんだんと美味しいとか嬉しいとか、
ああヤバいとか、そんな感情が剥がれ落ちていき、
最終的に幸せだけが残るような、
そんな食後のひと時を迎えた後、
帰り際に一輪の寂しさだけが残った。
ぼくは上品な人間なのでしないが、
人生最後の日だったら、皿を舐めていたかもしれぬ。
今回もまた、インパクトがしっかりとぼくの中に残った。
おごちそうさまでした !!!