この店には揺るぎないアイデンティティーがある。
無化学調味料であること。
店の入り口にはそのことを記す看板が掛けてあり、
よくよく思い返してみると、
こうやって個性を発揮している中華料理店ってないなと気付いた。
ぼくはアンチ化学調味料派ではないので、
絶対に化学調味料が嫌だということはない。
ただ、年をとっていくにつれ、
なるべく少ないほうが良いなと思うようになっている。
なるべく小さな幸せとなるべく小さな不幸せ。
そんな歌詞が年々刺さるようになってきたぼくにとって、
きっとこの出会いは小さな幸せの一つなんだろう。
「中国菜 随園(ずいえん)」は香椎宮の参道にある。
この界隈は昔から名水が湧く地域で知られていて、
確か不老水という名前だったと思うんだけど、
そんな清らかなイメージが、すごくぴったりと合うお店だと思えた。
店主は四川料理の名店をはじめ、幾多の店で修行を積んだそうで、
ぼくは麺狙いで訪問したが、
1500円くらいの贅沢ランチもすごくお得感を感じる。
注文したのが担々麺。サラダ、小ご飯が付いて850円。
思ったよりも安い価格設定だ。
はじめにスープを飲んでみると、
するりと胃の奥へと抜けていく感じ。
ゴマの旨味、肉味噌の油、
それらよりも、出汁の旨味が口の中で膨れる。
さらっとした口当たりながら、
しっかり旨味があって、
尻上がりに調子を上げていく。
インパクト勝負のホームランバッターではなく、
ヒットを積み重ねていくような安打製造機。
出汁の感じに惚れ惚れしているうちに、
肉味噌の旨味、ゴマのやわらかな風味が、
着実に伝わってくる感じもいい。
ほどよくピリ辛で、どんどん夢中にさせる力がある。
汁まで完飲しても罪悪感なし。
それぞれの素材がその魅力を十二分に引き出されている一杯。
きっと日替わりランチも美味しいだろうし、
五目チャーハン、そしてもちろん、汁なし担々麺も美味いに決まってる。
悩ましいなあ。嬉しいけど。
おごちそうさまでした !!!