目の前にバスが近づいてきた。
一瞬、時間が止まる。
過ぎ去る車内にチラッと気になる異性が見えた。
目が合った気がする。
しかもちょっと微笑んでくれたような気もする。
それから時計の針は進み出し、
何事もなかったかのように日常が動き出した。
ほんの一瞬の出来事だったのに、
なんだかとても鮮明にその時のことを覚えているが、
それっきりその異性と出会うことはない。
そんな異性がある日、隣に引っ越してきたかのような、
それくらい嬉しいやらキュンとするやらの再会だった。
昨年食べた冷やかけそばが、
まさか、今年も食べることができるなんて!
夢のようで、浮かれるしかなかった。
昨年の好評を受けて続投となった
梅と山芋の冷やかけそば。
昨年浮かんでいた氷がなくなっていて、
その代わりという表現が正しいかわからないが、
だしが一層、キーンと冷えているように感じ、
一口食べると、一気にクールダウンできた。
何より、泡の競演が愉快痛快。
山芋の泡に合わせた梅のエスプーマ的な泡。
山芋の粘り気によってフィットする泡に、
サーっと口の上で夢のように消えていくシュワっとした泡をオン。
まったく質感の異なる2つの泡が、
極上の口溶けを届けてくれて、
すべてが肯定されたかのような、そんな幸せを感じた。
麺は自家製粉をウリとした十割そばで、
冷やされることでキリッとコシが際立っていて、
その力強さとのコントラストもなんともいえない。
もう一つが、ナスとミョウガの冷やかけ。
ナス、ミョウガ、大葉、と並ぶ言葉をみて、
1+1+1が2や1になるわけがないのと同じように、
これが不味くなるわけがないって話だ。
ゴールデントリオ的な相性の良さは、
冷やかけのだしの中で、水を得た魚のように、
いきいきとその魅力を泳がせていた。
ちなみに、添えられたわさびを溶かすのも、すごく合う。
ああ、夏だね。
例年なら7月に登場する冷やかけシリーズ。
今年はもう始まっているので、
2度、3度と食べるチャンスがあって、本当に嬉しい。
おごちそうさまでした !!!