この店に足を運んだのは、過去にただの一度っきり。
店主は手をまっすぐ振り上げ、そのまま勢い良く下へと落とす。
その湯切りの所作がまるで悪を切る武士のようで、
思わず見とれてしまった。
それから随分と時間が経ってしまい、
振り返ってみると、この「麺人佐藤(めんびとさとう)」には
4年くらいぶりの訪問だった。
昼時をとっくに過ぎた14時近くの来店ながら、
駐車場は空車を除けばほぼ満車ではないが、
一台ちょうど空いていたのでそこにすっと滑り込む。
店内に入ってみると、女性のスタッフが多く、
どの方もキビキビと動いていて、
なんだかゆるやかだけどキリッとした空気が流れている。
提供が早いからだろうか、待っているお客の顔も皆悠々としていた。
ラーメンを注文し、壁に目をやる。
そこでぼくにとって空白だった約4年の間に起こったことを知った。
厨房にいるべき店主がいなかったのは、
体調を壊されてしまったからのようだ。
そして、その店主に代わって、奥さんが店を切り盛りしているという。
改めて厨房に目をやると、奥さんがちょうど湯切りをしていた。
もちろん、天高く腕を振り上げることはない。
ただ、きっちりと責任を果たそうという気持ちが伝わってくるような、
そんな丁寧な湯切りに見えた。
なんというか、もう、すっかり職人の表情だった。
注文したのは、鯛アラだしスープのらー麺。
塩と醤油が選べ、ぼくは後者にした。
そうなんです、ここにはいわゆる鹿児島ラーメンはなく、
鶏白湯スープのらー麺(これも塩、醤油が選べる)、
そして鯛アラだしスープのそれ、
鶏白湯スープで味わうつけ麺という“非鹿児島系”なラインナップ。
以前食べたのも鯛アラだしで、
だから、どこか記憶を辿るように一口目を味わった。
が、思いがけない新鮮な感動。
以前よりも美味しくなったというレベルではなく、
以前の美味しかったという記憶をかき消すくらい、
ぶっちぎりだった。
その証拠に真向かいに座る某カメラマンさんは、
一気に完食。あっという間の所行だった。
鯛の味わいがかなり力強く、まさに鯛そのものの旨みと向き合っているかのよう。
ただ、そういうスープだと途中からもったりと重たく、
魚臭さともいえるようなクドさが口に蓄積されていきそうだが、
それが、ない。
鮮魚系だと臨機@熊本を引き合いに出したくなるが、
まったく毛並みが違って、
あちらも良いが、こちらも良い。
見た目のインパクトがすごい。
丼の半分を覆い尽くすチャーシューは醤油ダレが効いているものの、
脂身の部分がほとんどないため、スープと喧嘩しない。
そして中太縮れ麺の強烈なインパクトも、
このスープには実にちょうどいいから、とことんニクい。
おごちそうさまでした !!!