KIJI|山田 祐一郎

福岡のフリーヌードルライター、ライターの山田 祐一郎

その一杯が食べたくて

<閉店>

ネギの緑はもちろん、チャーシューの色ですら派手に見える。

SHOP NAME: 「

麺屋 若武

」 / TYPE:

そうか、一周回ったのか。
一目見て懐かしさを覚えたラーメンは、
食べてみると全く違うように思えた。
第一印象は、真っ黒。
ネギの緑はもちろん、チャーシューの色ですら派手に見える。

今や行列必至の人気ラーメン店「博多一双」の姉妹店として、
3月30日に開業する「麺屋 若武」(めんやわかたけ)。
先日、ご招待いただき、試食させていただいたのが
お店の顔となるこのラーメンだ。
冒頭で触れたように、真っ黒なスープがトレードマークなのです。
黒色の正体は、焦がしニンニク油のマー油と呼ばれる香味油。
これがスープの表面を覆う。
そこで思い出されるのが、2つのお店。
一つがそのマー油を生み出した元祖「好来」(はおらい)@人吉で、
そこはリンク先を読んでもらえると詳細が分かるが、
とにかくインパクト大な、超個性派ラーメンだ。
そして好来で修行を積み、マー油の存在を広く世に知らしめた、
「なんつっ亭」、そして「博多 新風」。
福岡育ちの僕にとって、後者、新風さんが、
やっぱり印象に残っている。
このマー油をひっさげ、福岡にムーブメントを起こしたのが、
2005年のオープンから2年くらいだから、
ちょうど今から10年くらい前のこと。

先日、このラーメンを食べさせてもらって第一に思ったのが、
懐かしさ、ではなくって、新鮮さだった。
ファッションでも10年周期なんて言葉を聞くけど、
ラーメンにおいても、それが為されていて、
なんだか胸が熱くなった。
若き職人、店主・山田さん兄弟によって、
黒いラーメンが再定義され、
きっと新風さんのことを知らないであろう若者たちにも届き、
また新鮮な目線で親しまれていくような、
そんな光景が思い浮かぶ。

なんで新鮮に思ったのかというと、
やはり作り方、アプローチが先駆者たちと違うからだろう。
新鮮さの大元になっているのが、ベースのスープ。
取り方を本店と変えたというそれは、結構濃度があり、
どっしりとした土台を築いている。
それが、いい。それが、とても新鮮。
あと、マー油そのものは確かに厳ついフェイスで、パンチも十分だが、
苦味が突出しておらず、“苦マイルド”という塩梅。
ニンニクそのものを6段階でじっくりと火入れし、焦がしていくそうで、
強い臭みはなく、旨味をしっかり感じる。
高濃度の豚骨スープに、マー油をぶつけた一杯。
なんだか、本当に新鮮に感じた。

店主山田さん曰く「マー油なしでは成立しないスープ」だそう。
つまり、マー油抜きという注文は“基本的には”受けない。

なぜなら、そういうラーメン(オーソドックスな豚骨ラーメン)は
本店である一双で食べてもらいたいという方針で、
それをやると、そもそも山田さん的に中途半端な一杯になってしまうから。
もちろんそこには、複雑な思いがある。
そんな強硬な姿勢を貫いてお客さんに嫌な思いはさせたくない。
だけど、中途半端なラーメンを出すのも意に反する。
難しいところですよね、本当に。

このwebマガジンを読んで行かれる人においては、
どうか店主の困った顔を見ることなく、
この黒いラーメンを笑顔で気持ち良く啜ってほしいなと願っている。
きっと一度食べると、マー油なしという選択肢はなくなるはず!?

※現在、博多一双祇園店にリニューアル

おごちそうさまでした !!。

OSHINAGAKI

SHOP INFORMATION

閉店

麺屋 若武

menya wakatake
〒812-0038
福岡県福岡市博多区祇園町3-2

電話 092-282-3957

営業時間 11:00 - 00:00

定休日 なし

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