店の前に着くと、すぐに製麺室が目に入った。
見ればスタッフさんが麺を作っている。
その姿にじんと胸が熱くなった。
「万平」といえば、もともとは城南区七隈にあった人気うどん店。
丸天うどん専門店という、博多うどん、
ひいては福岡県下のうどん店においても、
ありそうでなかった、地味で、でもすごいコンセプトを引っさげ、
店主・平井さんはコツコツと日々チャレンジしてきた。
ちなみにぼくが知っている限り、
今もなお、福岡で、そして日本で、世界で唯一の
丸天うどん専門店だと思う。
なんといっても丸天は月替わりを含めて常に10種前後もあり、
ごぼう天や山芋、ベーコン、チーズなどなど、
そのバラエティは豊かかつ斬新。
キャッチーでありつつ、できたてアツアツのそれは、
うっとりする食感と風味で、
ぼくもすっかりファンの一人だ。
店主がもともと和食の料理人だったこともあり、
出汁にも定評があり。
塩を使わず、出汁の旨味でしっかりと土台が作られたつゆは、
すーっと飲み干せてしまう。
お客さんにも愛され、七隈の地にも根付いていた。
なら、なぜ移転したのか。
その答えは冒頭の通り。
麺を自家製に切り替えるためだった。
名店「ほり野」さんから麺を仕入れていたが、
この店では随分と七隈のお店よりも厨房も客席も広くなり、
製麺室のためのスペースもしっかり確保されている。
麺を持ち上げてみると、ふんわりと箸の圧力を受け止めるが、
噛みしめると引きがあり、ムニンと口の中で踊る。
確かにやわらかい。ただ、その一言で終わらせない豊かな表情。
ほり野さん同様の圧力釜仕上げの麺、
たしかにその実力を発揮していた。
山芋の丸天はふわもちだし、
つゆも、麺もやさしくって、心が穏やかになる。
おごちそうさまでした !!!