山口県下松市には牛骨ラーメンという文化がある。
その噂は昔から聞いていたが、そのルーツが福岡にあったのだと知って大変驚いた。
下松牛骨ラーメンの元祖とされているこの「紅蘭(こうらん)」さん。
その創業は昭和27年だという。
店の案内文によると、初代が福岡で何度も食べた豚骨ラーメンを、
豚骨ではない別の何かを使い、違うタイプのスープを作れないかと考案したのが始まりなのだという。
まさか福岡に! 思いがけない自分との共通点に興奮。
現在は3代目もいらっしゃるようで、本当にすばらしい。
驚くべきは、そのタイムレスでデリシャスな味わい。
なんでも創業からの製法を今も守っているそうで、
つまり60年くらい前からの味が、今食べてもしっかりと美味い。
和菓子、寿司、フレンチなど、色褪せない歴史的な食はいろいろと存在するが、
ここもそうなのかと恐れ入った。
女性比率が非常に高い厨房では、
絶え間なく訪れるお客たちへの一杯が、
それこそ絶え間なく作られていて、
心地よい気がぴりりと張っていて気持ちいい。
中華そばを注文すると、厨房のカウンターに煮卵用の鍋があって、
その中でスープで炊いた卵に気がついた。
いわゆる、おでん、なのだが、
この牛スープで炊くからすこぶる美味い。
中華そばの待ち時間も全然気にならない。
中華そばは並、中、大の3種があり、
ぼくは中を選んでおいた。
運ばれてくると、すぐに鼻元をぴくぴくと刺激する牛特有の甘い香り。
この香りに誘われて、顔を近づけ、目を閉じ、顔面でその風味を吸収。
刮目し、表面を観察すると、醤油がきっちり立った褐色スープだ。
脂っ気はそこそこありそうな面持ち。
スープを飲めばとろんと甘みが広がるものの、
こってり感はありつつ、でも、全然くどくない。
さすが老舗の貫禄、まさに横綱相撲的な低重心の安定美味。
麺のポリっと歯切れの良さにも惚れた。
武居製麺と厨房においてあったケースに書いてあったけど、
きっと地元の製麺業者なんだろうな。
すっごく好きだし、スープとの相性がすばらしい。
あと、もやしに蓋をするかのように盛られたチャーシューの、
薄切りのその厚みが麺との絡みにおいて秀逸。
細もやしもいいな、いいな。
ああ、今度きたら、ご飯もかき込みたい。
おごちそうさまでした !!!